GoToトラベルの再開の時期が検討されている。
個人的には、需要を作り出すために政府がお金を使う必要性を感じているから、GoToトラベルそのものについては賛成だ。「再開時期を検討する」とあるように、時期とやり方については、色々と考えなければならないだろう。
前回のGoToトラベルでは、利用者側視点の報道というか、煽りというかがほとんどで、宿側視点の報道はあまり見かけなかった。ネット上で、高級旅館や高級ホテルばかりが得をするシステムになってしまっているという話を読んだくらいだ。
実は僕は前回のGoToトラベルの時に、個人経営の旅館に呼ばれて、何回かGoToトラベルの還付申請のお手伝いをさせてもらった。宿側は宿泊者一人一人、誰がいつ泊まり、どのくらいの割引が適用され、何番のクーポンを渡したかなどの記録をGoToトラベル用のフォームにまとめて申請しなければならない。これは、それなりの作業量だと感じた。もともと経理部があるような、ある程度の規模がある旅館やホテルなら、それほど問題はないだろうけれど、個人経営の旅館やペンションでは、オーナー自らが全ての作業をこなさなければならず、通常業務+GoToトラベル業務は、かなりの負担になっている印象を受けた。
次に還付申請のシステムだけれど、これが、また、コロコロと変わる。
EXCELファイルのフォームにまとめてアップロードだったものが、Web上のシステムに入力するように変わったりと、その度に宿側は混乱する。個人経営の旅館やペンションのオーナーは比較的、高齢の方が多く、パソコン関係に疎い人が多かったりする。それでも、お金に関わることだから、システムのマニュアルのPDFファイルを印刷して、一生懸命にラインを引いて、その度、読むことになる。マニュアルの量もそれなりだから、苦手なものをこれだけ読むってだけでも大変な作業だったろうと、ラインの引きまくられたマニュアルを見て感じた。
さらにシステム障害や、ダウンロードしたEXCELファイルにミスがあったりして、お手伝いしている僕が腹が立ってくるくらいだった。例えば、うまく入力できない項目があると思ったら、そこだけEXCELのセルの連結がされていないとか、ちょっとしたことだけれど、高齢のパソコンに疎いオーナーさんだと、こういったところで、つまづいてお手上げ状態になり、作業がストップしてしまう。そして作業が遅れて、申請が遅れれば、それだけ還付は先延ばしになり、その間、宿側がお金を負担するわけだから、お金を回すのが大変になってくるわけだ。
こういったオーナーさん達だと、「書類をPDF形式でアップロード」と書かれていても、そもそもPDFが分からないから、その時点で、???状態になり、調べたり、人に聞いたりして時間を費やしていく。紙媒体の書類であれば、スキャンすればいいだけだろ!と皆さんは思うかもしれないが、紙媒体のものをアップロードしろと言われた時点で、どうしていいか分からなくなるのだ。分からないというのは、そういうことなのだ。
分からないことだらけで、つまづき、調べたり、人に聞いたりしながら作業するから、分かっている人が10分で出来る事に、2時間も3時間もかかるような事になってしまう。しかも、もともとのGoToトラベル関係の作業量はそれなりだ。そして提供されているシステムは障害は起こすは、申請のやり方がコロコロと変わるはで、個人経営の宿のオーナーさんにとっては、かなりの負担になっていたのではないかと思う。
おそらく、宿泊業で一番苦しいのは、こういった個人経営の旅館やペンションなのではないかと思うが、上に書いたような理由から、還付申請やGoToトラベルへ参加することを諦めてしまっているところも、けっこう、多いんじゃないかと僕は思ったりする。そういう意味では、GoToトラベルも、一番それを必要としているところには届いていないものなのかもしれない。
再開する際には、システムを使いやすく固めた上で、こういった小さな個人経営の旅館やペンションの現状をよく把握し、そういったところにも配慮したやり方で実施してもらえると素晴らしいのだけれど・・・。
個人的には、還付申請のシステムはそれを事務処理する側の意識が強く反映されたもので、本当に苦しい小さな個人経営の旅館やペンションを見ていないもののように感じられた。しかし、世間一般にも現場をほとんど知らない人間が意思決定を行い、現場が振り回されるなんてことはよくあることだ。なぜ、組織では、そういったことが起こるのかなんてテーマも、そのうちshin MICの勉強会で取り上げたいと思っている。