080 1449 1565
infoshin@shin-mic.com

徳川宗春とデフレを止めようとしない日本

Jul 10, 2021 学びの種
徳川宗春

もう1年以上前のような気がするけど、現在のshin MICの相棒から「たぶん気に入ると思う!」と、“しなのユーキ”さんの音楽CDをプレゼントしてもらった。

CDの最初の曲が「松本城初代城主・石川数正」だ。なんとも面白い曲で、相棒が言った通り、結構、気に入ってしまった。他にも、「中央西線」とか「名古屋の和菓子」など、松本市から名古屋市にかけて歴史上の人物や、名産品を、面白おかしい感じの歌にしていて、一時期、車の中でヘビーローテーション状態だったのだ。笑

このCDに収録されていた曲の中に上の動画で“しなのユーキ”さんが歌っている「尾張七代藩主・徳川宗春」もあった。曲の中で「名古屋に繁栄をもたらしたお殿様」と歌われている。当時、京、大坂、江戸の大きな都市に比べたら、名古屋(尾張)は村のような存在だった。「尾張名古屋は城でもつ」なんていう言葉があるくらい、城以外は大したものが無いような場所だったのだ。そんな名古屋を現在まで続く大きな都市となる繁栄の元を作ったお殿様が徳川宗春だ。

当時は徳川吉宗の享保の改革の真っ最中で、質素倹約が是とされ、徹底した緊縮財政と増税が行われていた。これをやれば、当然のことながら庶民の元気が無くなってくる。そんな中、尾張藩主の宗春は、名古屋で規制緩和と大きな財政出動を行い、名古屋だけが活気づき、全国から人が流入し繫栄することになる。宗春の政策は緊縮財政の公儀の方針に逆行するものだから、当然、公儀に疎まれ、やがて蟄居させられてしまう。

享保の改革を行った徳川吉宗は名君と称されるが、享保の改革は緊縮財政と増税がセットになっており、あくまでも幕府のための改革であって、そのつけを庶民が払わされるものではなかったかと僕は感じてしまう。それに対して徳川宗春の政策は、あくまでも庶民の繁栄を考えたものだったのではないかと僕は思ったりする。

徳川宗春

Unknown authorUnknown author, Public domain, via Wikimedia Commons

財政赤字と緊縮財政

財政赤字を解消するために緊縮財政と増税を行った享保の改革と同じように、現代の日本でも巨額の財政赤字をなんとかしなければいけないと、長いこと、緊縮財政と増税の路線がとられてきている。

マスコミなどでも「国の借金が・・・」「国民一人頭・・・」といった表現がされ、国がそんな状況であれば、次の世代が払わされるツケを減らすためにも増税も仕方ないという風潮が生まれたりする。しかし、そもそも財政赤字は国の借金ではなく政府の借金だ。だから我々国民が返済するものではなく、政府が返済すべきものだ。そして政府が返済する際も、増税しなくとも、日銀に通貨発行させて国債を買い取らせればいい。日銀は政府の子会社みたいなもんだから、連結決算で政府の借金は消えるわけだ。こう言うと、そんなことをしたらハイパーインフレを引き起こすという人もいるけれど、既に日銀は異次元緩和の名の元に巨額の国債の買取を行っている。これだけ巨額の買取をしても、ハイパーインフレどころか、相変わらずデフレなのだから、素人感覚ではハイパーインフレの心配など無用だと思うのだ。

緊縮財政の名の下に、無駄をなくそう!と、道路やダムなど様々な公共投資が無駄とされ、削られ続けてきた。しかし財政赤字を膨らませてきたのは公共投資ではない。なぜなら財政赤字を膨らませたのは赤字国債と言われる特例公債だからだ。公共投資は建設国債でなければ出来ない。そして建設国債の発行は増えていないからだ。まともに公共投資をしなくなったおかげでに日本のインフラは劣化し、もはや先進国と言えるのか?というところまで来てしまった気がする。お金は発行できるけど、インフラ等の資本の蓄積は一朝一夕にはできない。今の日本は緊縮財政の名の下に、過去の資本を食いつぶし、未来へ資本を残さないように、20年以上、走り続けてきてしまったのかもしれない。

GDPとデフレ

日銀に国債を買い取ってもらった一般銀行は、そのお金をどうするのだろうか?おそらくは、そのお金でまた国債を買うものと考えられる。そもそも銀行の基本的なビジネスモデルはお金を貸して金利を得ることだ。だから貸さなければ始まらない。本来なら企業の設備投資など民間に貸し出したいところだが、デフレ下では、企業も設備投資など積極的にやるところはないため、結局、政府に貸し出すしかなくなってしまっている状態だろう。

GDPはモノやサービスが生み出されなければ上がらないから、これではいくら日銀がお金をばらまいてもGDPには関係がない。一般銀行が民間に貸し出せば、設備投資等に使われるからGDPの数値が上がることになるけれど、デフレで需要がないから借りてくれないわけだ。

日本のGDPの成長率は他の先進国に比べても極めて低い。かつて世界第二位の経済規模を誇った日本は現在では第三位で第二位の中国との差は大きく開いていくばかりだ。このままいくと、近い将来、大国としての地位を失うことになるだろう。GDPはいわば国力であり、その成長率を保つことはとても重要だ。

GDPの成長率が落ちてしまったのは、少子高齢化と人口減少によるものとよく解説されるが、日本よりも人口減少が激しくともGDPの成長率を高く保っている国もある。この20年、仮に日本のGDPの成長率が他の先進国並みだったならば、高齢化による医療費の増加分も税収の伸びによって、ある程度は賄えた可能性がある。人口減少は何も日本に限ったことではない。にもかかわらず他の先進国に比べ日本だけがGDPの成長率が低いわけだから、人口減少だから仕方ないと思考停止に陥るのではなく、その原因をよく考えてみる必要があるだろう。

先日、コロナ対策の予算のうち約30兆円を使い残したという驚くべき記事を目にした。使い残した30兆円をもしそのまま使っていたなら、それはそのままGDPを押し上げてくれる。仮に本当にコロナ対策にもう使う必要がなかったなら、あと2回給付金を配布したって、その多くはGDPを押し上げることになっただろう。日経の記事によると日本がコロナ対策に使ったのはGDP比7%どまりであったのに対し、米国はGDP比13%だったそうだ。もう、こうなると政府がGDPを成長させずに国力を削ぐ方向で政策をすすめているとしか思えないくらいだ。とにかく今の日本は緊縮財政路線のもと、何が何でも財政出動を抑えようとしているのだろう。

GDPの成長率が上がるということは、それだけ新たにモノやサービスが生み出されることであり、需要が増えるわけだからデフレは解消されていく。日本がデフレから抜け出し成長路線に戻る為には、徳川宗春ではないけれど、財政出動を増やすことだ。必要な道路や港湾整備など公共投資を増やせばいい。それはそのままGDPを引き上げるし、玉突きで別の需要を作り出す。さらにそれは資本の蓄積として未来へも受け継がれるものだ。

個人的には、このまま緊縮財政を続けていたら亡国の危機がやがて訪れるのではないかと危機感さえもっている。

デフレを止めようとしない日本

米国は既に大規模かつ長期間に及ぶ公共投資を行う方向に舵を切ってきているし、このまま日本が緊縮財政を続けていたなら本当に衰退国になってしまうような気がする。

国会議員の中にも財政出動の拡大や消費税減税といった考えを持つ人も、増えてはきているみたいだが、まだ暫くは緊縮財政路線は続くのだろう。僕はかたくなに緊縮財政と増税路線を取り続ける政府によってデフレが引き起こされていると感じてしまう。つまり日本はデフレから抜け出れないのではなく、デフレを止めようとしていないのだ。

緊縮財政を続けて誰が得をするのかと言えば、増税や予算を削ることによって出世ができる財務省のお役人さんたちくらいではないかと思う。そのお役人さんたち個々の出世欲が大きな流れになって、日本は長く停滞してしまったのかもしれない。

でも、組織やそこに属する人の面子や保身などから国を巻き込む大きな流れが出来てしまう事は歴史的にも多いことなんじゃないかと思う。

自分で調べ考えることの大切さ

実は僕は20年くらい前は、「国の借金」「財政破綻」「ハイパーインフレ」といったような言葉から、緊縮財政や増税路線を支持していた。でも、折に触れて違和感を感じ、調べ考える中で、現在では上に書いたような考え方をしている。もちろん僕は経済の専門家ではないから、上に書いたことも専門家から見れば的外れなこともあるかもしれない。でも大切なのは、疑問を持ち、自分で調べ考えてみる事だ。

プロバガンダが特にそうだけれど、人は言葉が運んでくるイメージをそのまま受け取ってしまいやすい。そのまま判断してしまうのではなく、自分で調べ、自分の頭で考える事だ。それを繰り返すことによって、自分自身の知識も増えるし、物事の判断の仕方を変わってくる。だから何事も、すぐに思考停止に陥るのではなく、調べ考えることを大切にしたいと思っている。

ちなみに徳川宗春は、減税と財政出動により最終的に藩の財政難を招いた(米本位制の当時と管理通貨制度の現在の単純比較はできないと思う)が、名古屋という大きな資本を後世に残した。我々も次の世代に残すべきは単なるお金ではなく資本だと思うのだ。

と・く・が・わ むねはる♪ とくがわ むねはる♪

YUICHI KOBAYASHI

YUICHI KOBAYASHI

ちょっとした意識の持ち方で自分の世界は大きく広がります。人生を豊かにする楽しい学びをしていきましょう!!

Leave a Reply