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新型コロナワクチンとジェンナー | ファイザー・モデルナ・アストラゼネカ

Jul 3, 2021 学びの種
新型コロナワクチン

僕の所にはまだ新型コロナワクチン接種の通知は届いてないが、周囲の人には、結構届き始めている。ちなみに母は先日、第1回目の接種が終わったところだ。今朝、たまたまつけていたテレビからは、ワクチン接種を受けたくないと言っている人は若者に多いなんてニュースが流れていた。

僕は成人してから予防接種は記憶にある限り2回しか受けていない。昨年まで4年間勤めた学校で受けたインフルエンザ予防接種の2回だけだ。中学時代にインフルエンザ予防接種後、左腕が腫れ、腫れが引いた後も1年間くらい左腕全体の皮膚が突っ張る感じで、腕を曲げたりすると痛みが走る状態が続いた。それ以来、予防接種というものに感情的な抵抗感が出来てしまったわけだ。だから新型コロナワクチンも出来る事なら打ちたくないってのが感情的な本音だ。(^^;

 

ワクチンとは

ワクチンとは病原体の侵入と攻撃に備えて、予めそれに対する免疫を獲得させるための薬だ。そしてワクチンには以下のようにいくつかのタイプがある。

1.生ワクチン

病原体そのものを、病気を発症しないように弱毒化させ投与する。病原体を投与するから、感染するリスクのあるワクチンだ。BCG、麻疹・風疹混合 (MR)、麻疹 (はしか)、風疹、水痘(水ぼうそう)、おたふくかぜなんかが、生ワクチンだ。もし今回の新型コロナのワクチンがこのタイプだったなら恐怖感から、もっと拒絶感を示す人が増えたのかもしれない。

2.不活化ワクチン

感染しないように「殺した状態」の病原体を投与する。生ワクチンに比べて獲得される免疫力が弱いため、複数回接種が必要になってくるものが多いタイプだ。ポリオ、日本脳炎、インフルエンザなんかがこのタイプのワクチンだ。

3.組換えワクチン

病原体の成分の一部を投与する。このワクチンも獲得される免疫力が弱いため、複数回接種が必要になってくるものが多い。帯状疱疹、B型肝炎、破傷風、百日咳なんかがこのタイプだ。

4.ウイルスベクターワクチン

病原体の設計図を別の人体に無害なウイルス(ベクター)に乗せて投与する。エボラ出血熱のワクチンがこのタイプのようだ。

5.DNAワクチン

病原体の設計図の一部をDNAに乗せて投与する。

6.mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン

病原体の設計図の一部をmRNAに乗せて投与する。

 

新型コロナワクチン

ファイザーとモデルナの新型コロナワクチンは、上のmRNAワクチンであり、アストロゼネカはウイルスベクターワクチンだ。つまり現在日本で承認されている新型コロナワクチンはmRNAワクチンとウイルスベクターワクチンに分けられる。ちなみに中国のシノバック製の新型コロナワクチンは不活化ワクチンだ。

mRNAワクチンとウイルスベクターワクチンは最新技術であり、今回の新型コロナワクチン以前ではmRNAワクチンで承認されたものはないし、ウイルスベクターワクチンもエボラウイルスに対してのものだけだ。

現在、日本で接種が始まっている新型コロナワクチンはmRNAワクチンということになる。新型コロナウイルスの表面には、「スパイクタンパク質」と呼ばれる突起があり、これが人間の細胞表面のタンパク質と結合する。これが新型コロナ感染の条件になるから、mRNAワクチンは、これを阻害するのが目的だ。mRNAワクチンにはスパイクタンパク質の設計図が含まれていて、これを投与されると、細胞に到達したmRNAから細胞はスパイクタンパク質を生成する。これを免疫細胞が認識、記憶して、中和抗体を作り出すことによって免疫を獲得するという仕組みのようだ。上に書いた従来の組み換えワクチンでは工場で作っていたタンパク質を投与していたわけだけど、mRNAワクチンでは、その設計図だけを体内に入れ、タンパク質そのものはヒトの体に作らせる仕組みだから、凄い技術だ。ていうか、ヒトの体って凄い!

ワクチンのmRNAはスパイクタンパク質の情報だけだから、新型コロナそのものの情報は含まれていないわけで、感染したり、ウイルスの遺伝情報が体内に取り込まれることは有り得ない。またmRNAは核内には入らないから、ヒトの遺伝情報に組み込まれることもないし、mRNAは細胞に取り込まれてから20分以内に全て分解され、作り出されたタンパク質も10日以内に全て分解されるそうだ。つまり新型コロナワクチンの仕組みは、素人感覚でも、これまで我々が接種してきている既存のワクチンに比べ、安全性が高いと感じられる。

 

新型コロナワクチンとジェンナー

ワクチンと言えば、僕は真っ先に近代免疫学の父と呼ばれるエドワード・ジェンナーが頭に浮かんでくる。天然痘予防に種痘を開発した人物だ。ジェンナーは牛痘に感染した人は天然痘にかからないという農民の話から、牛痘接種を思いつく。牛痘はヒトの天然痘と違って、感染しても死亡率の低い病気だったようだ。僕が子供のころ読んだ本にジェンナーが自分の息子に牛痘接種を試している挿絵が出ていて、なぜかその印象が強烈で、その絵を未だに覚えている。しかし、実際は、ジェンナーが牛痘接種を最初に試した少年は、どうやら、実の息子ではなかったらしい。いずれにしてもジェンナーから始まる種痘によって我々人類は天然痘を克服したのは確かだ。

 

牛痘接種の風刺絵
James Gillray, Public domain, via Wikimedia Commons

 

上の絵はウィキペディアに出ていたものだが、1802年当時の風刺画だ。種痘を受けた人の体から牛が生えたり、角が生えたりしている。人は未知なるものに恐怖感を抱くから、ワクチンの概念が現在のように行き渡っていない当時であれば、牛由来のものを人体に打つわけだから、こんなデマが横行したって不思議ではない。恐怖感があると人は感情的なバイアスがかかりやすくなるのだ。

新型コロナワクチンに関しても、不妊になるとか、マグネットがくっつく体になるとか、様々なデマが飛び交っている。そういった中、ワクチン接種に対して抗議する人たちもいる。厚生労働省が発表している資料でも、ワクチン接種後に亡くなっている人がそれなりの割合で存在している。もちろん、厚生労働省は死因にワクチン接種との因果関係はないとしている。上に書いたmRNAワクチンの仕組みから考えれば、因果関係はないと考える方が自然だ。しかし、冒頭で書いたように予防接種そのものに感情的な抵抗感ができてしまっている僕は、それでも、やっぱり、なんかあるんじゃないの!?と考えたくなる。ましてや、ワクチンの仕組みを理解していない状態で、ワクチン接種に感情的な抵抗がある人ならば、デマに飛びつきたくなるのは、ごくごく自然なことだと思われる。

凄まじく技術が進歩し、情報も得やすい時代になった現在も、人の本質はジェンナーの種痘が始まった頃と何も変わっていないと言っていいのかもしれない。

我々の思考や判断は、感情や権威から多大な影響を受け、バイアスがかかりやすい。新型コロナワクチン接種のデマや自分自身のことを考えてみると、未知なるものの恐怖感がある時の感情によるバイアスは本当に大きいと思う。今後、ますます技術は進歩し世の中が変化していく中で、自分自身の思考や判断が何に影響を受けやすいかを自覚した上で、情報収集し、考える力はますます重要になってくると僕は考えている。

SHIN MICではディスカッションを通して、そういった力を養う事を大切に考えている。

 

 

 

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