子供に薦められてアニメ「Dr.Stone」を一気見した。
人気アニメらしいので、見たことがある人も多いのではないかと思う。物理、化学、地学、生物と科学知識が詰まったアニメで、とにかく面白く、一気見してしまった。
あらすじは、ある日、突然、空が発光し、その光を浴びた全人類が石化してしまう。約3700年後の文明が消え去った原始の地球で、主人公の石神千空(いしがみ せんくう)は石化が解けて目覚める。天才的な科学知識を持った千空は、遅れて目覚めた仲間たちと共に、何もないゼロの世界から鉄や銅、火薬、ガラス、サルファ剤、インスタント食品、発電所、はては携帯電話まで作り上げ、現代文明復活を目指して、奮闘していく。
このアニメがなんと言っても面白いのは、千空は現代文明に溢れている上記のようなものを、岩石や植物など身の周りの資源を使ってゼロから作り上げていくところだ。例えば、普段身の周りに溢れているガラス一つとっても、何もない状態でゼロから作ってみろと言われたら、我々は途方にくれてしまう。たとえガラスが何かを科学的に分かっていたとしても、原材料の調達、その加工技術、加工するための道具、それらが何もない状態では、お手上げだ。それを千空の知識をもとに仲間で協力して一つ一つクリアして作り上げていく様子は、見ていてワクワクする。
このアニメで注目すべきは、千空の科学知識と、もう一つは千空のリーダーシップだ。仲間にビジョンを示し、ロードマップを作り、適材適所に人を振り分け、そして自ら果てしない作業を繰り返して働く。しかも常に仲間と対等な関係を築いている。まさに現代に求められている理想的なリーダー像と言える。だから見ていて、千空はカッコいい!ちなみに僕は千空を見ていて、本田宗一郎が頭に浮かんでしまった。本田宗一郎にとっての藤沢武夫に相当する相棒がやがて千空にも現れるのだろうか?そんな見方もワクワクする。
おそらく、このアニメを見る子供たちは、科学的な知識の部分は理解できなくても、科学ってスゲー!とか、千空がカッコいい!とか、そういった感動を持つことだろう。この感動はとても大切だ。そして好奇心の強い子であれば、実際に石鹸を作ってみよう!とか、インスタント食品を作ってみよう!とアニメを見た知識から、さらに自分で調べ行動に移すかもしれない。行動に移した時のワクワク感は宝物だ。
物でもビジネスでも、特にゼロから作り出すときのワクワク感は格別だ。このゼロから何かを作り出そうとするときのワクワク感は、子供に限ったことではなく、何歳になっても、その気になりさえすれば手にいれられる。それは趣味でも仕事でも、ちょっとした日常のなかでの探求でも手に入れる事ができる。
真綿作り
森の中でヤママユガ(天蚕)の繭を取ってきて、真綿を作ってみた。
http://yamura-yasuke.club/?p=6058
イタドリのジャム
河川敷や高速道路の脇に生えているイタドリでジャムを作ってみた
http://yamura-yasuke.club/?p=395
上の真綿作りとジャム作りは僕の個人ブログに以前投稿したものだ。千空と違って、鍋や重曹など道具が揃った状態ではあるけれど、材料は森や野で調達してきたものだ。当時、子供と一緒に作ったものだけれど、大人の僕もとっても楽しかった。森の中の木にぶら下がってる繭から真綿が作れちゃうんだ!その辺に生えている草から、こんな美味しいジャムができるんだ!っていう驚きと感動がある。こういった驚きや感動は大切な学びの種になる。
宇宙戦艦ヤマト
僕は小学校4年生の時に宇宙戦艦ヤマトを見て感動したことを憶えている。それまで見てきた戦闘物のアニメはマジンガーZだったり、ゲッターロボだったり巨大ロボものばかりだったから、宇宙戦艦ヤマトは違うテイストで、初めての波動砲発射シーンは当時の僕にとっては衝撃的だった。
波動砲の威力から僕は当時巨大エネルギーに興味をもち、関心が原子力へと移っていった。ネットもない時代だったけれど、図書館の本を開いて調べ、広島に落とされた原爆はウラン235を使っているのに対して、長崎に落とされた原爆はプルトニウムを使っている事、ウランには235と238の同位体があり、235はわずかにしかない事、広島で使われたウランはカルノー石から採取されている事、ウランの濃縮過程でイエローケーキが作られる事、原爆と原発では使われているウランの濃縮率が違う事などを、詳しい理屈は分からなくても、知っていた。そして、原爆が核分裂反応であるのに対して、より大きな威力の水爆は核融合反応であり、水爆の起爆装置に原爆が使われている事、水爆はウランではなく重水素を使用する事、重水素は海水から無尽蔵に入手出来る事、核融合炉は原発と違い、核廃棄物が極めて少ない事を知った。だから小学校5年生の時には大人になったら、夢のエネルギーを手に入れるために核融合炉の研究に携わりたいなんてことをぼんやりと思っていた。まあ、中学に入学する頃には、そんな興味はなくなり、結局、核技術者を目指すことはなかったけれど。
ネットも無い時代、小学生の僕が、これだけ核関係について調べる事ができたモティベーションは、宇宙戦艦ヤマトの波動砲の威力に対する感動だ。
Dr.Stoneでは、身近にあるものの具体的な科学知識が満載だから、科学的好奇心の強い子にとっては学びのモティベーションの塊のようなアニメではないかと思う。Dr.Stoneに限らず、最近のアニメや漫画では、歴史や文化、人間関係など多くを学べるものが多いと僕は思う。そして、言葉ではうまく説明できないのだけれど、感覚的な部分で時代の先端が反映されている作品が多いように感じている。
学びのモティベーション
僕が高校に勤めた時に日本人とユダヤ人の同祖論を主張する生徒がいた。伊勢神宮の石灯籠に刻まれた五芒星に始まり、神社の位置関係、Y染色体ハプログループのD系統などを根拠に主張していた。
ちなみに僕が伊勢神宮の五芒星や日ユ同祖論を初めて知ったのも漫画だ。
都市伝説やオカルトチックなところから、日ユ同祖論にハマる人は結構いるから、彼も、そんな感じかな!?と思いながらも、じっくりと話をしてみたことがあった。話をしてみて、とにかく驚いた。ユダヤ人の歴史から、ユダヤ教、トーラー、生命の木、タルムード等々、ユダヤ関係の知識の深さが半端ない。う~ん、こりゃ大学レベルだ・・・。
彼も最初は都市伝説のようなところから日ユ同祖論を知ったようだ。でも、そこに「おもしろい」とか「すごい」という感動があったのだと思う。そして、それをモティベーションにして学んだユダヤの知識は深く本物だ。これだけの知識を彼自身が楽しく夢中で学んだというのがポイントだ。
日本の学校では未だに勉強は「教えるもの」「教えられるもの」といった感覚が強いが、学ぶのはあくまでも本人だ。彼のユダヤに関する知識も、僕が小学生の時の核に関する知識も、一般的なその年齢の知識を超えるものだ。なぜ、それだけの知識を持つことが出来たかと言えば、それを夢中で学ぶだけのモティベーションがあったからだ。
この学びのモティベーションになるものは、もちろん人によって違うのが当たり前だが、必ず「おもしろい」「かっこいい」「すごい」「きれい」「すごい」「ふしぎ」といった感動の感情がある。これが学びの種になり、そこから学びのモティベーションが生まれてくる。
だから次世代の人材を育てる上で、こういった学びの種を多く得られる環境が重要だと僕は思っている。しかし現在の学校環境では逆に、この学びの種を排除してしまうケースが多々あるのだ。どうしても大人は学校という既存のシステム側からの目線と都合が優先してしまうからだ。
僕はこれでも年齢の割には頭が柔らかい方だと勝手に思っている。それでも、子供に薦められて最近のアニメを見たりすると、はっと、自分の感覚が時代遅れになっていることに気づかされることがある。知らず知らずのうちに自分の感覚が時代遅れになってしまっているのは多くの大人に当てはまるものだと思う。次世代の子供たちに多くの学びの種を提供し、自分自身も楽しくワクワクするためにも、我々大人も学びの種を意識し、純粋な学びのモティベーションの感覚を改めて思い出すことは大事だと思っている。
SHIN MICの思考と探求のクラスでは、そんな多くの学びの種を提供していきたいと思っている。