僕が住む安曇野では、今、福寿草(フクジュソウ)が咲き誇っている。福寿草は名前の通り、福と長寿を招いてくれるおめでたい花として、古くから日本では親しまれている。冬の間、白だったり茶色だったりのモノトーンな風景の中に、鮮やかな黄色で出現する様は、たしかに目出度い感じがする。

鉢植えや庭植えをする人も多いが、実は福寿草が猛毒であるという事を知っている人は案外少なかったりする。致死量から考えると、かの有名なトリカブトより、はるかに毒性が強いということになる。トリカブトと違って福寿草の場合は解毒剤があるらしいけれど。
以前、とある高級な懐石料理屋さんで、庭に様々な山菜を植えて栽培し、それを採取して食材にしているの見かけた。よく見ると山菜に混じって福寿草も一緒に植えられているではないか。知らなかったらまずいと思い注意喚起をすると、福寿草って毒のなのかと驚いていた。こんなお店やさんで、採取の際、山菜に福寿草が誤って混じってしまったら、大ごとだ。
この季節に咲き始める植物で僕が楽しみにしているのが座禅草(ザゼンソウ)だ。座禅草は同じサトイモ科の水芭蕉と似た雰囲気がある。しかし花は水芭蕉と違って、形状がずんぐりしていて色合いも下の写真のような感じだ。水芭蕉の爽やかな雰囲気とはずいぶんと違っている。この形が僧侶が座禅を組むイメージに似ていることから、この名になっているわけだ。僕はあまり感じたことはないが、全草に悪臭があるため英名はスカンクキャベツと言うらしい。この悪臭でハエとかをおびき寄せて受粉の助けにしているわけだ。

座禅草は、僕が住む地域では、大町市や白馬村の湿原や湿地帯で目にすることができる。いつだったか山に餌が少なかった年に白馬村では、座禅草が熊に食べられてしまったなんて記事を目にして、こんなものでも熊は食うのかと、驚いたことがあった。
実は座禅草は、自ら発熱して雪を溶かして顔を出してくる。しかも発熱温度は25℃にもなるんだとか。その発熱メカニズムの詳しい事は未だに分かってないそうだ。何気に座禅草は不思議植物なのだ。この座禅草の発熱制御アルゴリズムが岩手大学で研究されて、工業で一般的に使われるPID制御よりはるかに優れたものである事が分かった。既に実用化に入ってるらしいが、この先、一般的なものになるのだろうか?
いずれにしてもザゼンソウ制御は効率的で、かなり省エネなんだそうだ。自然は偉大だ。
身の周りの植物に目を向けてみよう!
僕は福寿草が猛毒であるということを知った時は驚いたし、座禅草が発熱して自分で雪を溶かして顔をだすということを知った時は、自然て偉大だ!と感動した。
実は身の周りの植物って調べてみると、なかなか面白い。道端に生える雑草も調べてみれば、食べられるものだったり、ハーブになったり、麻薬成分を含んでいたり、薬草だったりと、とても興味深いものが、かなりある。
大抵の人は草なんか興味がないから、おそらく道を歩いていても意識の中にすら入ってこないと思う。でも少し分かれば、普段歩いている道にも全く違った世界が見えてくる。
観賞用の植物だって調べてみると随分と面白い。なかにはKGBがかつて暗殺用の毒物として使用したものの原料の植物だったり、麻薬成分があるものもあったりと、随分と見え方が変わってくる。
そんな植物を調べていると、必ず、それは歴史や社会問題に繋がってくるから面白い。つまり身の周りの植物を少し調べるだけでも、随分と自分の世界は広がってくるのだ。
植物に限らず、身の周りの、普段当たり前にスルーしているものを意識して調べてみるだけでも世界は随分と広がるという事だ。世界が広がるという事はそれだけ視野が広くなるから、自分の人生に転がり込んでくるチャンスも多くなるし、なによりも人生が豊かになる。
是非、身の周りのものに好奇心の目を向けてみて欲しい。それだけでも得られる学びは無限に広がるのだ。