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デマと陰謀論-SNSとエコーチェンバー現象

Mar 4, 2021 学びの種
デマと陰謀論

「第5世代(5G)移動通信システムが新型コロナウイルス感染拡大に寄与している」

これは昨年の春、ヨーロッパを中心に飛び交ったデマだ。5Gとコロナは関係ねえだろ!と普通はそう考える。でも、このデマは当時猛威を振るい、イギリスなどでは電波塔が何ヶ所も放火される事件にまで発展した。

世界にはあらゆる陰謀論やデマが溢れている。これらはSNSを通して拡散し、もはや何が真実で嘘なのかも分からないような状態だ。しかも我々はどういうわけか、こういった陰謀論やデマが大好きだ。だから、こういったものとは一線を画し、自分は理性的だと思っている人も、一つや二つは何らかの陰謀論やデマを信じてしまっている可能性がある。もちろん、今ここで、こうして書いている僕自身も含めてだ。

日本の国家破産論

以前、僕は日本の国家破産論に夢中になったことがあった。
大学を卒業したての頃、日本の巨額の財政赤字を知り「えっ、やばいじゃん!」と思ったことを記憶している。その時は、その程度でスルーしてしまったが、それから20年近く経った2009年頃、ネット上で日本の国家破産についての記事を目にすることがあった。日本の財政赤字は、大学卒業したての頃に見たものとは比べ物にならないくらいに膨れ上がっており、「いよいよ、マジでやべぇんじゃねえのか!」と危機感を抱いた。

そこから僕は日本の財政赤字がどの程度ヤバいのかを調べ始めた。実はこの時点で既にバイアスがかかっている。ヤバい情報ばかりを集めてしまうからだ。調べていく中で、当然、「日本の財政赤字は問題ない」という情報も目にするが、どの程度ヤバいのかという視点で調べ始めているから、目にしても意識の中には入ってこない。ところが目にしたことによって、それについて、しっかり考える事もしていないにも関わらず、反対意見も十分に検証した気分になってしまっていた。

当時は、識者と呼ばれる人の中にも日本の国家破産を声高に叫ぶ人がいたし、書店には国家破産本が並んでおり、ネット上には国家破産が起きた場合の惨状について書かれたものが氾濫していた。こうした情報を吸収する中で日本の国家破産は自分の中では既定路線になり、あとは、それが「いつ起こるのか?」だけが問題になっていった。

 

国家破産が起きた場合、程度の差こそあれ、起こることはある程度決まっている。

・インフレ率の急上昇
・通貨価値の下落
・長期金利の上昇

当時の僕はこれに備えるための手段を調べ、いくつか実行に移していた。お陰で金融関係の知識を得ることができたが、こうした行動に移すことによって、近い将来、国家破産が起きるという考えはより強固になり、思考が偏っていき、自分の中で国家破産は起こるべきものになっていった。

実際に公平に情報を仕入れ、仕組みがよく分かってくれば、現在の日本の状態で、そんなに簡単に国家破産なんて起こるわけがないことが分かる。もちろん、何かの要因によって、ずっと低金利に抑えられている長期金利が急激に上昇を始めれば危機的な状況に陥るから、全くあり得ない話ではないけれど、巨額の財政赤字があるから国家破産が起きるってのは、かなり乱暴な考え方だと思う。

 

僕が国家破産論にのめり込んだ流れは、デマや陰謀論を信じていく流れによく似ていると思う。「えっ、そうなの!?」「えっ、ヤバいじゃん!」といったところから、バイアスがかかった状態で情報を仕入れ、やがて考えは強固になり、信念めいたものに変わっていく。最終的に、デマや陰謀論が否定されることは自分自身のアイデンティティーを否定される事と同じような感覚に陥っていくのだ。

SNSとエコーチェンバー現象

いまやSNSによって24時間どこにいても世界中の人とコミュニケーションをとることができる。一瞬で地球の裏側の人とまで繋がれて、場合によっては本当に友達になり、付き合いが始まることもあるわけで、SNSはとても開かれた空間のように感じられるが、実際のところどうだろうか?

例えば、僕はよくFacebookに自分が住んでいる安曇野の綺麗だと思った風景写真を投稿する。すると「きれいですねー。」とか「行ってみたい!」といった共感のコメントがつく。人に共感してもらえることは嬉しく楽しいから、また、投稿する。もし「つまらない写真を載せるな!」なんてコメントが付けば、僕はその人をブロックするだろうし、そもそも、そう思った人は、わざわざコメントなど書かずにスルーしていくはずだ。つまり、僕の投稿にはある程度僕と同じ感性を持ってる人が集まってきているわけだ。

そう考えると、様々な国の人や老若男女と幅広くコミュニケーションがとれるようでいて、かえって感性的には実社会より狭い範囲の人とのコミュニケーションになっているのかもしれない。

さらにグループなどになれば、一定の信条だったり趣味だったりと、共通したものを持つ人の閉鎖された空間になってくるから、そこでの投稿はさらに共感が得られやすくなってくる。グループ内では、自分と同じ意見がたくさん寄せられ、それを見聞きし続ける中で自分の意見や考えが増幅・強化されていく。こういうのをエコーチェンバー現象なんて言う。

上で書いた日本の国家破産の話も、それについての掲示板を読んでいくうちに、自分の中で考えが強化されていった部分もかなりあったと思う。

これが陰謀論などをSNSのグループ内で話すような場合は、エコーチェンバー現象によって信念に変わり、さらにはアイデンティティーにまで高められていくことが容易に想像ができる。特定のグループで、エコーチェンバー現象が起きる場合、そのグループは自分の外部に置いたアイデンティティーと言ってもいいかもしれない。

 

 

ひとたびデマや陰謀論が自分自身のアイデンティティーにまで高められてしまうと、他人の反対意見が受け入れられなくなってくるのはもちろん、自分自身でおかしいと気づいても、それを否定することが難しくなってきてしまう。

しかしながらデマや陰謀論にも一定の真実が含まれていることがあるから、その背景を調べてみる事は大切だ。「えっ、そうなの!?」という、にわかには信じがたいけれど真実味を帯びていると感じた情報を調べる時は、自分自身の中にそれを信じたい衝動がないか、正当化する情報だけを熱心に見て否定する情報を軽く受け流していないか、さらにSNSから情報を受け取っている場合は、エコーチェンバー現象の罠に嵌ってないかを、本当に冷静に自分に問いかけながら調べていく必要がある。そうして一歩引いたところから、調べることが出来れば、デマや陰謀論からも多くを学ぶことが出来る場合がある。

そもそも我々はデマや陰謀論を好みやすい習性をもっているということを肝に銘じて、細心の注意を払って上記のようなことを意識して情報に対峙しないと、デマや陰謀論に飲み込まれてしまう。そのくらい、昨今のネット上の情報は、何が真実かを見極めるのが難しくなってきているのだ。

YUICHI KOBAYASHI

YUICHI KOBAYASHI

ちょっとした意識の持ち方で自分の世界は大きく広がります。人生を豊かにする楽しい学びをしていきましょう!!

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